女性でピルを服用している人は意外と多く、その目的は人それぞれ違います。
ですが、ピルを服用することによって女性特有の問題や症状を改善させることができます。
ピルは、一般的な治療薬とは異なり、症状を改善させるため(病原菌を死滅させるため)に有効な成分を含んでいるのではなく、配合されているのは女性が元々体内に持っている女性ホルモンです。
では、女性ホルモンが配合されたピルを服用することで、どのような効果が得られるのでしょうか。
また、服用することで身体に何らかの影響を与えることはないのでしょうか。
ここでは、ピルが生まれた背景や歴史、日本における普及率とその存在価値などを学びながら、より詳しく見ていきましょう。

ピルが生まれた背景と歴史

研究 ピルの歴史は、1930年代の半ばにステロイドの研究を行っていたアメリカ人研究者が、ノースキャロライナで採取された山芋(ヤムイモ)の中に、生理痛を緩和する植物性ステロイドの一種である「ジオスゲニン」という物質を発見しました。
当時、この研究者はジオスゲニンから女性ホルモンのプロゲステロンを大量に合成させる方法を開発していたため、山芋からジオスゲニンが発見されたことで、より安価に大量のステロイドホルモンを作り出すことが可能となったのです。
1950年代半ば頃から、アメリカで本格的な臨床実験が行われ、最初は月経異常や子宮内膜症などの婦人科症状の治療薬として承認され、その後1960年に経口避妊薬として誕生しました。これがピルの歴史です。
アメリカの研究者が、ジオスゲニンから大量のプロゲステロンを合成させる開発を行った背景には、アメリカにおいて中絶で悩んでいる多くの女性を救いたいという思いがあったからです。
これにより婦人科症状を緩和させる治療薬の歴史が、後にピルが生まれる背景となりました。
経口避妊薬としてのピルが開発された背景には、アメリカの研究者が受胎運動家の女史と、ピル開発の父とも呼ばれた科学者がであったことで歴史が生まれました。
当時のアメリカでは、望まない妊娠をする女性が多くおり、人工中絶に悩む人が多数いました。
こうした状態を嘆いた受胎運動家の女史が、効果的な避妊方法は無いかと科学者に相談しました。
そこから、合成ホルモンを使用した避妊方法が生まれ、その避妊方法で使用されたのが現在のピルの原型となっています。

ピルの最適なホルモンバランスの発見は時間がかかった

ピルの原型となった合成ホルモン剤は、経口摂取によって投与する避妊法で、副作用として強い吐き気を伴うことが多くありました。
その理由としては、開発されて間もないため人体への影響が少なく、かつ避妊効果が得られる最適な用量が見いだせていなかったことが背景にあります。
そのため、高用量のピルを使用していました。しかし現在のピルは、その後の研究によって副作用が少なくなるように改良が加えられており、安心して服用することができます。
ピルが開発されると世界的に普及し、これまでに世界で1億人以上の女性が服用したといわれています。
特に開発国であるアメリカでは1,200万人以上の女性が服用しており、イギリスでは16歳~49歳の女性の約3分の1が服用しているともいわれています。
日本におけるピルの歴史は浅く、1999年に経口避妊薬として承認されています。
日本は、世界と比較してもピルの承認は遅いですが、その理由としてはピルの強い副作用を軽減させるため、長期間にわたり臨床実験を行っていたためです。
初期の経口避妊薬は中用量~高用量であり、避妊効果は期待できましたがそれと引き換えに強い副作用に耐えなければなりませんでした。
この問題を解決させるために長期間を費やしたことが、承認されるまでに時間が掛かった大きな要因です。
しかし、長期間の臨床実験や研究を重ねたことにより、避妊に失敗した際(性交時にコンドームが破けるなど)に妊娠を避けるために服用する緊急避妊薬(アフターピル)も開発されました。
アフターピルは、服用することで急激にホルモンバランスを乱れさせ、人工的に子宮内膜を剥がして生理を引き起こさせます。これにより、女性の避妊率が向上しています。

ピルの日本での普及率と存在価値

佇む女性 アメリカでは1200万人以上の女性に普及し、イギリスでは16歳~49歳までの女性の約3分の1の人達に普及しているピルですが、日本での普及率はどうなのでしょうか。
アメリカでは1960年代から普及しましたが、日本ではそれから数十年経過した後の1999年です。
その背景には、ピルが持つ副作用が関係しています。開発当初は高用量であったため強い副作用が発生していました。
その後、徐々に改良されて副作用も減少しました。これにより、1970年頃から改良型のピルの利用者が世界で増加しました。
しかし、1970年代半ばになると利用者が徐々に減少していきました。これには、メディアによる副作用の報道が関係しているとされています。
当時の報道では、35歳以上の愛煙家がピルを使用することで、心筋梗塞などの循環器系疾患によって死亡する確率が高くなることを、実際に発生した35歳以上の愛煙家の死亡例を挙げて大きく伝えられました。
このような背景があり、1970年代~1980年代前半は日本で承認されることはありませんでした。
しかしながら、ピル承認の動きは日本でも起こっており、1985年以降になって一時は承認の動きも見られましたが、1992年にHIV感染の拡大を懸念して、厚生労働省が中央薬事審議会の審議を中断しました。
その後の調査で、HIV感染とピルの使用率との間には、明確な関係が認められないという結論に至りました。そして、それから数年後に、日本でのピル使用が承認されました。
日本は世界中でもピルの承認が遅く、承認された際にもメディアで大々的に報道されるようなことはなく、それほど大きな反響が起こることはありませんでした。
そのため、認知度が低く大きな普及にもつながることはありませんでした。また、認知度が低いことでどういう薬なのかを正しく認識している人が少なく、ピル=避妊薬というイメージが強く、それ以外の存在価値は無いと思っている女性が多いです。

世界のピル普及率の比較

日本におけるピルの普及率は、約1%~3%といわれています。この数字は、欧米と比較しても遥かに低く、承認国の中で最も低い数字となっています。
現在、最も普及している地域がヨーロッパであり、普及率上位3国は全てヨーロッパとなっています。
第1位はドイツで52.6%、第2位はオランダで49.0%、第3位はフランスはで43.8%となっています。
平均すると約30%~50%となります。開発国であるアメリカでも18.3%の普及率となっています。
こうした数字から見ても、日本での普及率はとても低いことが分かります。
日本での存在価値が、避妊薬の他にもうれしい効果があるという点に向けられるようになることで、ピルの利用目的にも幅が出てくるため、普及率は上がってくる可能性があります。
ただしピルは、日本では医師の診断のもとで処方される医療用医薬品に分類されるため、薬局やドラッグストアで簡単に購入できるものではありません。
こうした理由も、日本で普及率が上がらない一つの要因であります。

ピルの種類と用途

ピル服用中の女性 ピルに配合されている女性ホルモンは、体内で作られた女性ホルモンと同様の働きをする合成ホルモンが利用されています。
女性ホルモンには卵胞ホルモンのエストロゲンと、黄体ホルモンのプロゲステロンがありますが、配合されている合成ホルモンは、製薬会社によって多少の違いがあります。
そのため、配合されたホルモンによっていくつかの種類に分類されます。
現在、製薬会社から様々な種類が販売されていますが、このうち卵胞ホルモンにはどの種類も「エチニルエストラジオール」という成分が使用されています。
しかし、黄体ホルモンには「ノルエチステロン」「デソゲストレル」「レボノルゲストレル」「ゲストデン」「ドロスピレノン」という、物質の構造が異なる4種類が使用されています。
そのため、黄体ホルモンの種類によって、ノルエチステロン=第1世代、レボノルゲストレル=第2世代、デソゲストレル・ゲストデン=第3世代、ドロスピレノン=第4世代に分類されます。
また、配合されているホルモン量に違いがあり、服用するピルに含まれるホルモン量が同量であるものを1相性、ホルモンの配合比率が三段階に変化するものを3相性とに分けられます。
婦人科の症状は人によって現れ方の度合いが異なるため、より詳細に分類することで身体への負担が少なく、より高い効果を得られる自分に合ったピルを選ぶことができるようになります。

世代別に見るピルの特徴

第1世代・1相性は、他の種類に比べて子宮内膜を厚くする働きを抑えることができます。
これにより、月経時の経血量を大幅に減らす効果が得られます。そのため、この種類は子宮内膜症の治療によく利用されます。
また、経血を大幅に抑えられるため生理痛予防にも効果的です。ホルモン量のバランスが一定なので、月経前症候群にも効果的です。
第1世代・3相性は、体内で起こる自然なホルモン分泌量に近い用量が配合されている、中間増量型です。
ホルモンの全体量が少なくて済むほか、不正出血の抑制ができます。
日曜日から服用するサンデースタートの28錠タイプとなっているので、比較的飲み忘れることも少なく、生理開始日が平日になるため週末も有効に利用することができます。
第2世代・3相性は、日本で最も普及しているタイプです。黄体ホルモンの働きによって子宮内膜の状態が安定しやすいため、服用中に起こる不正出血の頻度を少なくしてくれます。
これにより、生理がきちんと訪れるようになります。第3世代・1相性は、他のものと比べても最も男性ホルモンによる作用が少ないタイプです。
大人ニキビの治療にも効果を発揮しますが、このタイプは服用から1ヶ月程度で十分な効果が得られます。
第4世代は、保険適用の治療薬として2010年に発売された新しいピルです。主に月経困難症の治療に使用されます。
アフターピルにも種類があり、主に「ヤッペ法」「ノルレボ錠」の2種類があります。
ヤッペ法は、性交後に2回服用する必要があり、その避妊率は85%です。
避妊率が多少落ちるうえに、副作用が出やすいという特徴がありいます。
ノルレボ錠は、性交後1回の服用でその避妊率は95%です。
ヤッペ法よりも避妊率が高いうえに副作用も出にくいです。
ただし、その分費用が高く、ヤッペ法が約5,000円~7,000円なのに対し、ノルレボ錠は15,000円前後と約2倍~3倍の料金がかかります。

ピルの飲み方

ピルの効果を得るためには、正しい飲み方で使用する必要があります。
飲み方を間違えると、避妊率に影響が出るほか、治療目的の場合は効果が低下する可能性あります。
初めて服用する際の飲み方としては、ライフスタイルによって「デイ1スタート」か「サンデースタート」を選ぶことができます。
デイ1スタートは、生理が始まった日を第1日目として服用をスタートする飲み方です。
サンデースタートは、生理が始まってから最初に訪れる日曜日から服用をスタートさせる飲み方です。
デイ1スタートとは違い、日曜日からスタートできるためカレンダーでのチェックがしやすく、飲み忘れ予防にもなります。
また、週末に出血が起こるのを避けることもできるため、大切な休日も有効に利用することができます。
錠剤には、21錠入りと28錠入りの2種類があります。
21錠入りタイプには1シートに21錠分が入っており、飲み方としては、1シートを飲み終わったら7日間飲むのを休み、再び次の1シートを飲みます。
7日間の休薬期間に消退出血という生理のような出血が起こります。
その間には卵胞が発育するため、次のシートを飲み忘れてしまうと卵胞が成長してしまい妊娠する確率が高くなります。
28錠入りタイプは、7日間の休薬期間空けの飲み忘れを防ぐために工夫されたタイプです。
21錠タイプのように休薬期間を作らず、常に服用し続ける飲み方ですが、休薬期間にあたる最後の7錠分には薬効成分が含まれていないため、服用はしますが休薬している状態と同じになります。
最後の7錠は飲み忘れを予防するために習慣付けることを目的に服用するものです。
ピルの効果を得るためには、飲み忘れは避ける必要があります。
そのため、特に飲み忘れが心配な人や、初めて服用する人におすすめです。
ピルの服用方法は特有で、一般的な治療薬とは異なっています。
1日1錠を、決められた順序で、なおかつ毎日決まった時間に服用する方法です。
この服用方法によって、生理の初日から避妊効果を得ることができます。

ピルを飲み忘れた場合の対処法

もし、飲み忘れてしまった場合には、飲み忘れが1日であれば気付いた時点ですぐに飲み忘れた1錠を飲み、いつもの時間にその日の分を飲みます。
生理開始から2日目~7日目の間に服用を開始した場合には、そのまま服用し続けることで、服用開始2週間後から避妊効果が得られます。
生理日の調整を目的に服用する場合は、生理日を早めるか遅らせるかによって飲み方が変わります。
生理日を早める場合には、生理開始から5日目から次回の生理を起こしたい日の2日前くらいまで服用し、その後中止させます。
これにより服用中止から2日~3日後に消退出血が起こります。
生理を遅らせる場合には、生理予定日の5日前くらいから服用し始め、生理希望日の1日~2日前くらいまで服用します。
アフターピルの服用方法としては、ヤッペ法は性交渉から72時間以内(最大120時間以内まで有効)に2錠を服用します。
その12時間後に再び2錠を服用します。
ノルレボ錠は性交渉から72時間以内(最大120時間以内)に2錠を服用します。ノルレボ錠は1回の服用となります。